物語 青い糸


宿屋で働く少女千代は、ある日磨いていたガラス戸に映る
馬に乗った人影に恋をしてしまう。
番頭の正吉じいさんのいたずらも重なって、
千代は日を追う毎にその幻の人への憧れを自分の中で増幅させていってしまう。
すっかりその虜になってしまった千代は嫁と現実との狭間で耐えられなくなり、
網掛けの青いマフラーを残して白い小鳥になってしまう。

その20年後、その宿にやってきた写真家周一は屋根裏部屋で
千代のマフラーを見つける。
それは周一が幼少の頃に慕った圭子姉さんが編んでくれた
靴下とあやとりの事を思い起こさせる。
そのマフラーをほぐしてあやとりをしてみると、白い小鳥が現われて
その糸をついばんで持ち去ってしまった。
その小鳥に、若くして亡くなった圭子への憧れを重ねあわせた周一は
その小鳥にどんどん惹かれていく。
そして、二人の憧れが完全に重なったとき周一も白い小鳥になってしまうのだった。