物語 谷間の宿


絵を描きに山へ入った”ぼく”は、日暮れに引き上げる途中
「たにまのおやど」を見つける。
お腹がすいていたので、中へ入ると女中さんが出てきて離れへと案内される。
そこは四方が網戸になっている部屋だった。
豪勢な宿の食事をとっていると網戸に蛾が何匹も張り付いていて
じっと”ぼく”を見つめているのだった。
そして蛾が笑ったり話したりしているのを耳にした”ぼく”は
ここが言わば「虫かご」のような場所で、食事を取った”ぼく”が眠って
蛾として羽化するのを待っていることを知った。
怖くなった私は一番中寝ないように努めたが、朝気がつくとそこには
建物も何もなくなっていたのだった。