物語 水あかり


川のほとりで私は、「あの子」を待っていた。
あの子は、裸足で自分の落とした靴を探していた。
そのすりむけた足を見て私は、
買ってもらったばかりの白い長靴を貸してあげたのだった。
それから、何時間もたったがあの子は一向に戻ってこなかった。
もうすぐ日が暮れようとする頃になって、私はその女の子を探しに川を下った。
やがて、水際にうずくまったままじっとしている女の子を発見した。
彼女の視線の先には、黒こげたバレーシューズがあった。
事情を聞くと、なんとその女の子は昨日打ち上げられた花火で、
空へ上っていく途中で靴が脱げてしまって、地上へ落ちてきてしまったのだというのだ。
女の子は、もう一度空へ上るために花火の家へ戻りたいと言うので、
私はついていってあげることにした。
橋の下にある花火の家に着くと、花火のかあさんが出迎えてくれた。
夕飯の招待を受けた私は、花火のかあさんの料理に口をつけたが、
すると体が軽くなっていく感じがした。
心の中に花火の歌があふれてきて、私はこのままだと花火として
空へ打ち上げられてしまうのだと思った。
私は花火のかあさんが持っていた花火を打ち上げるのに使うタンブリンが
無造作に置かれているのを見つけるとそれを手にして叩き、花火の家を飛び出した。
振り返ると、たくさんの花火が上がるのが見えたが、
あの長靴を借りていった少女だけは、長靴を返しに私の後を追ってきていた。
私は長靴を受け取ると、少女のためにタンブリンを叩きつづけた。
そして小さな花火が一つ上がっていくのを見るのだった。